モチベはアイドル

留学・旅行記録、韓国アイドルから中華アイドルまで

《中国映画》鬼子来了(2000)を見た感想

f:id:lantian_moon:20210429222821j:plain


鬼子来了(2000)

邦題:鬼が来た!

英語名:Devils on the Doorstep

監督:姜文

主演: 姜文,姜鸿波,香川照之

サイト:ネット上で「鬼子来了 在线」と検索して出てきたサイトで視聴。

個人評価:💙💙💙💙

 

 

中国映画を見始めた当初、自分の好きなジャンルを開拓できていなかった私はよく、『中国映画 おすすめ』と検索して、ランキングに入っていた映画を見ていた。そういった類のランキングにいつも入っていた映画が『鬼が来た!』だった。

 どの中国の動画アプリにも入っておらず、ようやく見ることができた。2時間半の長~い映画。夜中に半分みて、残りを朝起きて見終わった。

 

 

鬼が来た! Devils on the Doorstep 鬼子来了

以下ネタバレ兼感想になるのであらすじだけ知りたい方はこちらをどうぞ

 

 

 

華北·挂甲台という場所に住む马大三は、年末が近づく冬の夜に、”我”と名乗る人物に麻袋を渡される。中には傷を負って捕まった日本兵の花屋とその翻訳官が入っていた。”我”という者には逃したらこの村の人は皆殺しだと脅されているし、日本人を捕虜としていることが日本兵にばれたらそれもそれで命がないかもしれない。そんな厄介な立場になってしまった马大三は家族会議の末、仕方なく地下倉庫らしき場所で二人をかくまうことに。

 

花屋は最初、"こんなところで死ぬなんてみっともない!"、"俺は死にたいんだ!"とわめいて怒鳴ってのオンパレードだったが、大みそかの日、「"我"という人物が来る=死ぬ」と分かると”死にたくない”と泣き出した。(なんだ.....やっぱり死にたくないのか...と思った。(笑))

花屋は日本語で暴言を吐くが、翻訳官が機転を利かせた訳をすることで保たれる马大三側と花屋側の関係。死にたくない翻訳官は賢く、"中国語の罵倒語を教えてくれ"という花屋に対して「大哥大嫂过年好,你是我的爷,我是你的儿」と教え、それを罵倒と信じた花屋が怒り口調で马大三に叫ぶところは本当に面白かった。

 

一度は殺そうと試みるものの、優しいというべきか、马大三は勇気が出ないし、他の誰もやりたがらない。それならばと殺し屋に頼むが失敗に終わる。そして気づいたら半年間も花屋たちをかくまっていた。これ以上自分の元に置いておくことができない、ということで開放することを決めるのだけど、その頃には花屋にも马大三達に対して『感謝』の気持ちが芽生えている。"ありがとうございます、あなたたちは命の恩人です!"と声を張るし、『開放する代わりに食糧を与える』という契約にも応じていたので、「もしかしてこの映画は戦争の裏にあった中国と日本の絆を描いた話なのか?!」なんて思いかけた。

が、そこからだんだん暗黒な雰囲気が漂い始める...。

 

花屋が生きて戻ってきたことに対して怒る日本軍の隊長のシーンはすごい嫌な感じがした。ひたすら謝る花屋。( 生きたいと思って何が悪いんだ。こんなわけのわからん思考が充満していた時代に生まれてこなくてよかったー。花屋可哀そう)なんて思ってたが、その後の日本軍が村人を殺す場面で"鬼"がついに顔を出した。

 

約束通り食糧を村人たちに渡し、一緒に宴会を楽しむ中で、村人皆殺しするきっかけを作ったのは花屋だった。今までお世話になってきた村人を自分の手で殺したのも花屋。

(同じ日本兵に"生きて返ってきたこと"で集団リンチされていた花屋を哀れに思った自分がバカみたいだった。でも、どこか花屋の起こしたこの行動に同情してしまう部分も....。)

その日、日本が降伏したと知っていたのに村人を殺す命令をした日本軍の酒塚隊長とその他花屋以外の日本兵たちは、なぜ罪なき村人を殺したのか。まだ戦争で狂った状態にあったのか。

不釣り合いな音楽が流れる中殺されていく村人たちをみて悔しさや遣る瀬無さから涙が止まらなかった。

 

最後、花屋が马大三を処刑する表情を見ても思ったが、狂気の最中にいる人間には、情や良心などそんな"人間らしい"側面は残されていなくて、ただそこには人間の姿をした鬼がいるだけ、なんだなと。



 

 

今まで南京大虐殺や、第二次世界大戦中の日本と中国に関係した映画をいくつか見てきた。この映画は中立的だと言われているそうで、中国人の情けないと思われる部分を書描いている点や、日本を圧倒的悪者としているわけではない点では、確かに他の戦争関連の映画とは区別されるべきなのかとも思う。

映画《金陵十三钗》では街で見かけた女を手当たり次第強姦したり、少女にまで手を出したりと日本人の自分が見ても”悪者”として描かれていた日本軍。

《一九四二》では少しでも気に食わないことがあると丸腰の農民を無残に切り殺すシーンがあり、こちらも日本軍に反感を抱かずにはいられない描写になっている。

一方で、《鬼が来た》における日本軍はずっと悪者ではない。むしろ世話してくれた中国人に対して花屋は感謝していたし、中国人の子供と仲良くしていた野々村という人物もいた。日本兵が中国人に怒鳴りつけて脅していたシーンはあったが、すぐに殺したりはしていない。

しかし、最終的に日本兵が起こした行動の残虐さでいえば、3つは共通している。むしろ、恩を仇で返している点でいうと"人間的に"より一層残虐で怖いのはこの映画に出てくる日本兵だと思う…。

 

題名にある"鬼"とはなにか。それは村人を皆殺しする日本軍そのものを"鬼"としているかもしれないし、日本兵に限らず戦争によって狂った人間全員を指しているかもしれない。

 

フィクションとはいえ、監督であり马大三を演じた姜文は、日本に来て元兵士にインタビューして情報収集をしたそうだし、「日本軍は限りなくこれに近いことをしていたんだな」と改めて思い知らされた。

 

半年間、花屋と翻訳官をかくまっている間は彼らを殺せずにいた马大三が、最後暴れるシーンは、『香港制作』の少年と似ている部分があると思った。人は何かを失うとそれまできなかったことが簡単にできてしまう。その豹変も心の中の”鬼”の仕業なのかなと思ったり…。

 

 

 

 

 

大陸の友達と《一九四二》を見たときに、中華民国のことをボロクソに言っていたけど今回この映画にも中華民国のいや~な部分が描かれていて、憎しみの感情ってあくまでも根拠があって生まれるんだな…とおもった。そうじゃない時もあるけど。



 

 

あとくだらない感想ですが、姜文のなまりが上手すぎる....と思ったら本人の出身地である河北省唐山の唐山话を話していたらしい。どうりで自然なわけだ....笑

 

 

人によってはトラウマにもなりうるので手放しにおすすめできませんが、見る価値はあると思います…(いつも最後これで締めてるやん…笑)