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《中国映画》2021年版・印象に残った中国映画3選

 

 


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もうこの季節がやってきました。

印象に残った中国映画3選。

 

 

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下半期はTwitterでやっていた映画感想(#lantianの中国映画記録)をあまり投稿しなくなりましたが、裏では引き続き地道に見ておりました。

去年と変わった点でいうと、映画ではなくドラマを何本も見たというのと、映画に関しては15〜20年前の名作と最新作を交互に見たような年だったと思います。

今年みた映画を合わせると累計256本になりました。高校生くらい~2019年までが100本、2020年が55本なので、今年一年だけで100本近く見てたことになります。意外と見てた!

 

これだけの本数を見た割に、ものすごく心に残った映画が沢山あったか、といわれるとそうでもない気がしますが、今回は以下の3つのテーマに分けて映画を選びました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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①展開が面白かった映画ー「人潮汹涌」(2021)

題名:人潮汹涌(2021)

洋題:Endgame  

監督:饶晓志

出演者:刘德华,肖央,万茜,黄小蕾 など

カテゴリー:喜劇、犯罪

 

 

あらすじ:

売れない役者の陳小萌(肖央)は、金も恋人も友人も仕事もない生活に嫌気がさし、何度も自殺を図る。ところが死にきれず、失意のまま貰い物の無料利用券を持って銭湯へ。受付では「期限切れです」と跳ね返されるものの、ちょうど隣にいた高い時計を付けた男(刘德华)に助けてもらい、なんとか入れることになった。

その後、陳小萌は浴場で気絶している男を見かける。それがさっきの金持ちそうな男だとわかると、彼は自分のロッカーキーと男のものをこっそり入れ替え、その場を去った。

一方で、病院に運ばれた金持ちそうな男は、石鹸で足を滑らせて頭を強く打ち、記憶喪失になっていた。

そこから陳小萌は”金持ちの男”として、金持ちの男は“陳小萌”として生活していくことになる。売れない役者で苦しんでいた生活から一転し、高級車、高級時計、豪華なマンション、そして大金に囲まれる優雅な生活を楽しむ陳小萌だったが、ある電話をきっかけに男が殺し屋らしいことを知る。

対して金持ちの男は、記憶が早く戻るようにと、陳小萌の形跡をたどって彼が住んでいた家へと向かう。その途中で、李想(万茜)という出版社で働く女性に出会う...。

 

 

感想:

期待たっぷりで見始めた割には中弛みした印象はあったのですが、最後のシーンで「やっぱり見てよかった」と思いました。

この記事を書くためにもう一度見直した時には中弛みを感じなかった(どれも伏線であったことが分かる)ので、繰り返し見れば見るほど味が出る映画な気がします。

原作は邦画「鍵泥棒のメソッド」で、日本アカデミー賞脚本賞を受賞した作品でもあります。さらに中国だけでなく、韓国でもリメイクされています。

 

自分的には、「人潮汹涌」つまり「人で溢れかえる」世界で、誰かと巡り会い、関わり合うことの面白さを描いた作品だと感じました。

内容を要約すると、殺し屋と売れない俳優が銭湯での転倒事故をきっかけに入れ替わり、売れない俳優が殺人を実行しようとするが、人が良すぎて実行にうつせず、殺人依頼者にも嘘がバレて身の危険に晒されてしまう、というもので、これだけ見るとサスペンスのようですよね。

しかし、登場人物はみんな人情味あふれた人たち(単純すぎる人、優しすぎてバカを見る人、人を助けたせいで自分が苦しむ人、など)なので、結末もそうした人の優しさを感じられるものとなっています。

さらに、たくさんの人が行き交う世界で殺し屋、売れない俳優、出版社のマネージャー、殺人依頼者がお互いに知らない間に出会い、最終的に交差し合うところが見所です。現実的にはあり得ない展開かもしれないけど、「そこでその人とその人がそう出会うんだ!」となるので物語として見る分には面白い。

 

また余談ですが、成功する人の違いについて学ぶことができた気がします。

陳小萌として生きることになった金持ちの男(訳ありの殺し屋)は、自分が置かれた状況(陳小萌は俳優をしていた)に適応するために真面目に努力することで主役級の役に抜擢されます。さらに、その素直さのおかげで、恋人のような関係性の人まであっさりと作ってしまいました。

これを見て、同じ名前を背負って生きても、どう行動するのかの違いで成功するかどうかが分かれているのだなと感じました。日常生活において辛いことに直面していると、全てを投げ出したくなりますが、心の持ちようや努力の仕方次第で、ある程度状況は変えることができるということを教えてくれました。

 

総括すると、後半にかけての展開がシリアスなのに、コメディ要素が絶妙に散りばめられているため、ハラハラしながらも笑える映画を見たい方におすすめ。

そして後味最高なので、終わりよければ全てよしな映画を見たい方、人と人との人間模様を見るのが好きな方にもぜひ見ていただきたいです。

あんまり期待はしないほうが良いですが、見て損はない映画です!

 

 

 

 

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②見たあとに色々と考えさせられた映画1ー「我的姐姐」(2021)

あらすじ:両親の死をきっかけに、残された幼い弟を親の代わりとして育てるか、地元を出て自分の理想を追い求めるかの選択に直面した姉の心の変化を元に描いた家族愛の話。

 

主人公・安然(张子枫)の両親は、息子が欲しいあまり、「娘には足の障害がある」と嘘をつき、第二子の出産許可の申請をしていた。政府の検査員が障害の有無を確認しに来る日、安然は障害があるふりをするように言われていたが、それを守らずにワンピースを着て踊っていた。それに激怒した父にお尻を叩かれたことを、安然はずっと覚えていた。

大学入試のときには、本命である北京の大学の臨床医学科に合格できる能力があったにも関わらず、志望校を地元の大学の看護専門に変えられていた。安然は自分の理想を諦めきれず、北京の大学院で臨床医学を学ぼうと準備していたが、突然両親が交通事故に遭い、死んでしまった。

そして安然は、両親の愛情を奪っていった憎らしい6歳の弟を養うのか、早く地元を出て自分の夢を追いかけるのか、という難しい選択に直面する…。

 

 

 

感想(ネタバレ有り):

"家族愛"の話だと紹介されることが多いみたいですが、「男尊女卑」、「収賄による事故の隠蔽」、「コネ社会」など伝統的慣習が横行する地方で苦しむ現代の若者の話、とも言えると思いました。

 

まず、主人公が置かれている環境がありえないレベルで最悪。

幼少期に父親に障害を持っていると嘘をつくように強要されるし、弟の世話の問題やお金の問題で、第一志望を地元の大学に勝手に変更させられる。

その後、妥協して看護学科に入学し、学費を稼ぐために病院で働くものの、コネで医師になった無能な女に「なんで医師にならないの?」と嫌味を言われる。

終いには、両親の死に際にかかってきていた電話に出れなかったことで、親戚に「あんたのせいで死んだんだ」と責められる。

(実際のところ、弟の同級生の父親が飲酒運転で事故を起こしたのですが、警察に賄賂を渡しているので罪には問われていません)

 

このように、主人公の安然は、家父長的な伝統のせいで、小さい頃から不利益を被り、さらに両親の愛を感じることができずに育ってきました。

 

そりゃ〜元凶である両親が死んだならいっそう、「こんな場所早く出ていって自分が生きたいように生きてやる!」ってなりますよね。

しかし、最大の問題である弟はまだ6歳。安然は早くから弟を養子に出すために里親探しを進めていましたが、親戚には北京なんか行かずに自分で弟を養うべきだと強要されます。

こうして、物語の中心となる弟を養うか、養わないかの話が始まるのです。

 

安然は、両親の生前は関かわりがほとんどなかった弟と、弟の養子縁組が決まるまでの時間を一緒に過ごします。その過程で愛情が芽生え、一緒に生きていくことを選択する訳ですが...。

最後のシーンにて

 

弟「これからどこにいくの」

姉「どこだろうね」

 

という会話があり、まさに姉と弟の未来を暗示しているかのようで、重苦しい気持ちになりました。姉の最終的な選択は、素敵な家族愛を描いているように見えます。しかし、この結末で本当にいいのかよ?と疑問を抱かずにはいられませんでした。

 

はっきり語られた訳じゃないので、捉え方によってはもしかしたら弟と一緒に北京に行ったかもしれないけど、私の解釈では、最終的に自分の夢を捨てて息苦しい環境で弟と生きていくことを選択「させられて」しまったように見えました。そのため、救いのない物語で終わってしまったなぁ、という印象。

 

この映画自体は、家父長制が根強く残る社会や、親の都合で子供を産むことに対して疑問を投げかける主旨があるのではないかと思います。

しかし、それにしても主人公を取り巻く環境が極端に悪すぎる故に、レビューサイトでは物語の展開そのものに「現実味がない」、「家族愛ではなくホラー映画だ」といったコメントも数件見られました。一概にフィクションだ、現実味がない、と否定するのは違うような気がしますが、話の展開を嫌う人がいるのはわからなくもないです。

 

したがって、物語の展開に疑問を抱く人は多いかもしれませんが、いろいろと考えさせられる意味ではいい映画だったのではないかと思います。

 

 

 

 

 

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③見たあとに色々と考えさせられた映画2ー「兔子暴力」(2021)

題名:兔子暴力

邦題:兎たちの暴走

洋題:The Old Town Girls

監督:申瑜

プロデューサー:李玉、方励

脚本:邱玉洁

出演:万茜、李庚希、黄觉、俞更寅

ジャンル:ドラマ、家族、犯罪

公開日:日本・2020年東京国際映画祭、中国・2021年8月21日

 

 

あらすじ:

工業廃墟地と化した小さな町で継母に育てられた水青(李庚希)は、突然戻ってきた母親の曲婷(万茜)と17年ぶりの再会を果たす。水青は普段、家庭内で邪魔者扱いされていたこともあり、母親との時間を心から楽しんでいた。しかし、とある男の登場により、母親が危機的な状況に置かれていることを知る。水青は母親を守るために、極端な行動を取り、暴走していく•••。

 

 

本作品に関するあれこれ:

南京で2010年に起きた親娘誘拐殺人事件がモデルになった作品。

申瑜監督は本作で監督デビューだそうです。

プロデューサーには、ファンビンビンが主演で有名な《苹果(ロスト・イン・北京)》や、個人的に好きな映画である《二次曝光》の監督を務めた李玉、脚本は、《风中有朵雨做的云》、《我要我们在一起》などの脚本を書いた邱玉洁。

 

今回調べるまで脚本家の邱玉洁という方を知らなかったけど、鑑賞済みの中国映画の中でも特に印象に残っている作品の脚本を書いていらっしゃって驚き。

(好きな作品は同じ監督or脚本家あるある。(逆も然り))

 

ちなみに、本作品の評価については、私が鑑賞の際に利用した動画配信サイト・愛奇芸では評価7.8、豆瓣では5.9なので、そこまで高くないです。

(参考までに、アイドルファンで見た人も多いであろう《少年的你》は豆瓣で8.2です)

 

撮影地は、四川省の南部に位置する『攀枝花市』

1960年代に沿海部から内陸部へ産業を疎開させる「三線建設時代」に人工的に建設された都市で、鉄鋼業や鉱業が中心。工業以外だと、マンゴー、ザクロ、サクランボなどのフルーツが有名だそう。(映画の中にもマンゴーが度々出くる。また、母親が黄色のものを、娘が緑のものを身に付けているのですが、それは人間の成熟さをマンゴーの成熟具合で表現しているのだ、という考察も見つけました。)

映画では、攀枝花市の中でも、工場廃墟の町が舞台となっていました。

人の活気がなく、時間がそこだけ止まっているかのようだった•••。

 

モデルになった事件は南京で起きたものなのに、なぜ遠く離れた攀枝花市で撮影なのかと言うと、プロデューサーである方励が監督に勧めたからだそう。ちなみに、方励は四川省出身で、李玉監督作品の《观音山》や韩寒監督の《后会无期》などのプロデューサーも務めた方。どちらも四川省の都市で撮影されています。

そもそも、これらの映画に限らず、社会派映画は四川省重慶雲南など中国の西南地域で撮影されたものが多いな、と感じます。

 

 

感想※以下ネタバレを若干含む:

物語は、公安に事件が発覚するシーンから始まり、事件が起こった経緯を遡る形で進みます。

 

主人公が17年ぶりに会う母親との時間を楽しんでいたのも束の間、母親の巨額の借金が発覚。期日までに払わなければ母の命も危ないということを知り、水青は同級生を誘拐し、身代金をその家族に要求するという手口を実行することに。

元々は、親が自営業をしている金持ちの友人を誘拐するはずでしたが、色々あって失敗し、もう1人の友人を誘拐することになります。しかし、計画は思い通りに進まず、とんでもない事態に陥ってしまう•••という内容。

 

 

ちなみにエンドロール直前に「青少年の成長過程において、社会と家庭はより多くの温もりと関心を与えてください」と、本作品の主旨について提示されました。

この主旨だけを考慮すると、よくできた話なのではないかと思います。

家庭環境が子供の思考、行動に影響する、という中国でも近年話題の「原生家庭」を描いたもので、登場人物の暴走した行動の背景には、両親の仲の悪さや、幼少期親に見捨てられて愛されなかったこと、束縛など親からの暴力などが原因としてあった、と分かる内容になっています。

他に、度々出てくる黄色の持ち物、魚などの考察が面白いと思いました。

 

だけど、腑に落ちないこともやっぱりありまして•••まず、実際に起きた事件をモデルにしたという点です。

南京で起きた事件の概要を見たところ、娘の幼少期に家を出た母親が15歳の娘に泣きついて、借金返済のために同級生の人質事件を起こそうと提案した、という話でした。また、人質となった同級生の親の通報によって犯罪がバレて(この流れは映画も同じ)、親子が事情聴取されるのですが、その際に母親は「全て娘の責任である」と供述をしたのだそう。

 

しかし、映画内の母親はむしろ犯罪を起こすことを躊躇していて、暴走していたのは娘の方でしたし、犯罪がバレそうになったときに自首したのも母親からでした。以上のことから、「親子の絆」を描いた感動話、のように脚色されている部分があったのと、映画だけ見ると母親に同情してしまうような描き方だったと思います。

また、親子愛を描いているように見えて、母親の娘に対する感情があまり見えてこないことも、自分の中で違和感として残りました。

 

2つ目の腑に落ちない点としては、被害者側の描き方です。

青少年へ愛情を注ぐべきだというメッセージを伝えるために、主人公以外の登場人物の家庭環境も崩壊している設定にするのはわかります。でも、殺されてしてしまった友人の家庭環境も事件が起きた原因の一つであるかのように描かれているのは「実在の事件である」ことを知った上で見てしまうと、引っかかる点ではありました。

 

ただやはり、今年見た映画の中では非常に印象に残っているので、こちらの作品を3つ目に選びました。

 

 

 

 

 

 

以上が今年印象に残った映画でした。

もう少し深い考察や自分なりの感想が書けるように努力します...。

来年も沢山中国映画をみるぞー!!