井柏然にじわじわハマってきた!
ということで彼の出演作品を探す中で見つけた「失孤」という映画。
中国の社会問題の1つである「児童誘拐」について描いた作品でした。
私は映画を観た後、レビューを見て他の人は何を感じたのか見るのが好きなのですが、その最中に新たに見つけた同じ児童誘拐を題材にした映画である「亲爱的」。
ぜひ見て欲しいと思った映画なので、両方同時にまとめてみようと思います。
あらすじ、ちょこっとネタバレ、感想、中国の社会派映画に関しても書いているのできになる情報だけ見ていってください〜😁
<あらすじ>
失孤(2015)
雷泽宽(刘德华)は生きていれば高校2年生になる息子を誘拐された父親。
誘拐された息子の情報をネットで拡散し、目撃情報などを得ると、誘拐された子供の写真で作った旗を付けたバイクですぐにその場所に向かう、という生活を17年間続けている。
(バイクの後ろにあるのが誘拐された子供のかおじゃしんと寻子という文字)
ある日雷泽宽は、次の目的地に向かう途中でバイク修理の男曾帅(井柏然)と出逢う。
彼は雷泽宽のバイクに付けてあった旗を見て子供を探していることを知っていた。
驚くことに曾帅は誘拐された子供で、実の親を探していることが本人によって告げられる。
それから2人は両親・息子を探しにバイクで大陸を駆け走る......。
(その他登場人物)
福建の若い女・・・息子が誘拐され、一人でビラを配り続ける。
<ちょこっとネタバレ>
曾帅はある日の夜「実は誘拐された当時、同じ村の子供と二人で誘拐された」と寝言のように呟いた。この情報をすぐさまネットに書き込んだ雷泽宽のお陰で、のちに曾帅の故郷に関する有力な情報をゲットすることができました。
最終的には曾帅は両親との再会を果たします。彼は、武夷山(福建)の山奥で暮らしていたけど、本当の両親が住んでいたのは重慶の小さな村でした。
(自分メモ)
❇︎中国での誘拐事件は素早く行動がカギなんだそう。というのも誘拐して24時間以内に犯人は確実にその省を出て、遠くに行くからです。省外に出るのを防ぐ必要がある。
「亲爱的」でも誘拐と察してすぐ、父親が駅に行くシーンがありました。実際に曾帅が重慶から遠く離れた福建の山奥まで至ったことからも「遠くへ行ってしまう」ということが理解できます。
また、福建の女の息子に関しても進展が。
SNS上で誘拐された息子の写真を見ていた若い男性が、そっくりな子供を抱えた人を駅で見かけ、警察に通報し、誘拐者確保という流れになった。
しかしそこでショッキングな出来事が発生します。子供の母親は、見つかる可能性が低く希望のない生活に疲れ果ててしまいます。
息子が見つかり、誘拐した犯人が火車の中で捕まえられる頃には、それを知らずに飛び降り自殺をしていました.....。
両親が見つかる、誘拐犯確保という明るい面と、母親に自殺という暗い面の両方が描かれている映画でした。
さらに最終的には雷泽宽の息子も見つかりませんでしたが、彼はそれでもなお諦めずに引き続き探し続けるのでした.....。
亲爱的(2014)
深センで暮らす元夫婦の間には息子が一人。元夫婦は交代で息子を見ていた。
事件が起きたその日は、母親が父親に息子を預けに行き、そのまま帰って行きました。
その後、まだ3歳の息子(鹏鹏)は近所の子に遊びに行こうと誘われます。行かせない、と言っていた父親だったが、結局近所の子供に「絶対に鹏鹏を見とけよ」と念押しし、遊びに行くのを許しました。
一方鹏鹏は近所の子たちと遊びに行った先で母親の車を見つける。「ママー!」と叫びながら車を追いかけている最中、ある者に誘拐されてしまう....
<ちょこっとネタバレ>
「亲爱的」の方もネットでの情報拡散により、誘拐されて3年後に鹏鹏が安徽の農村で見つかる。しかし、誘拐された本人(鹏鹏)は自分が誘拐されたこと自覚していないようだった.....。
DNA鑑定でも確かに離婚した元夫婦の息子だと証明された。けれど鹏鹏は、同じ時に誘拐され、同じ家で妹として扱われてきた子と一緒に暮らしたいと訴え、なかなか実の両親に懐かない。
一方、誘拐した男は農村住みで、中卒さえしていない妻がいた。
彼らの間には子供が出来なかった。夫は深センに出稼ぎに行き、子供二人を誘拐して戻ってきたものの数年前に死亡。
残された妻は子どの2人を実の子と同様に育てていたが、ある日突然本来の両親に息子を取り返される。
残った妹に関しても誘拐であったことが警察にバレてしまう。女は親権を認めてもらえず、一緒には帰らせないという警察を振り切る際に思わず手を出してしまった。
警察への暴行で半年ほど服役した後も、せめて娘だけでも連れて帰ろうと「誘拐ではなく捨てられた子を保護した」ということにして児童保護施設を相手に裁判を起こす。
しかし、捨てられた子かどうかを証明するものは何もなく、彼女の思う通りはいかなかった.....。
<感想>
児童誘拐という中国の社会問題を考えるにあたって、
①誘拐された子供の親
②誘拐された子供
③誘拐された子供を買う人
この三つの視点を知ることができるのがこれらの映画だと思います。
①子供を誘拐された親たちの中には、諦めず何年間も探し続ける者もいれば、希望のない生活に絶望して命を絶つ者、そしてまだ生きているはずの子供を「死亡した」と見なし、罪悪感のようなものを抱えながら新たな子供を作る者など....。いろんな親がいることがわかります。
「亲爱的」では子供が誘拐された親が集まる団体のようなものが出てきますが、そうやって親同士で励まし合わないとやっていけないんだろうと感じました。集団で活動すれば有力な情報とかも得やすいでしょうしね。
その団体をまとめてる人物の息子は6年経っても見つからぬまま......。一人っ子政策中の中国では、子供の「死亡届」を出さなければ新しい子供を授かることができない(厳密にいうと、子供は作れるが罰金を払うことになる)。「死んでいない」はずなのに「死亡届」を出すことの歯がゆさと、それでも子供が欲しいという気持ちの狭間にいる夫婦が印象的でした。
②誘拐された子供自身が「誘拐された子供」と分かっている子は親を探そうと必死になる。
なぜなら身分証明書がないため、結婚も電車での移動もできないから。しかし鹏鹏のような子の場合、もはや誘拐した人を「本当の親」として生きているため、実の親に懐けなくなってしまう。
実の親が育てることが全て正しいのか....?と思ってしまいました。
③そして誘拐した子供を買った人。
「亲爱的」の場合は、教育を十分に受けていない農村出身の女性の姿が描かれています。
亡くなった夫には女性のせいで子供ができないと言われていたが、本当は夫が原因だったことが映画の最後で発覚します。また、誘拐してきた子供であることを黙認して育ててきたにもかかわらず、娘が可哀想だから、と子供の親権を主張します。
この二つ、どちらも正しい知識や「誘拐は犯罪という認識」が薄いために引き起こされたことなのではないかと思います。
総じて、「貧富の差をなくす」、「社会保障を整える」、「教育を受ける」、ということは基本中の基本でありながらあらゆる社会問題の解決に対して非常に重要なことだと感じました。
誘拐された子供を買っているのは後継がいない農村の夫婦がほとんどだと言われています。その背景には老後に農民が受けれる社会保障が充実していないことが原因としてあげられます。
子供を買うことによって老後の支えを得たいということでしょう.....。
また、ここには2015年まで続いた「一人っ子政策」も関係しています。二人以上を産んでしまえば罰金が発生する。なかなか2人目がつくれず、しかも子供ができたとしても後継にならなければ農家は成り立たないため、誘拐した子供を買って後継者を得る.....。
現在は廃止された政策なので今後誘拐問題に改善が見られるかもしれません。
2018年時点で書かれたネットの記事では、年間20万人もの子供が誘拐されているという中国。
中国にいた時にはあまり実感できなかった問題だけど、今詳しく知ってみると結構怖いなー!20万人って多すぎないか...?と思いました...。
ちなみに・・・
今まで見てきた中国の社会問題派映画
「我不是药神」
「风中有朵雨做的云」➖汚職関連
「悲伤逆流成河」➖いじめ
「嘉年华」➖児童レイプ、戸籍なし
「过春天」➖密輸
などなど...いろいろ見てきたけどこうやって並べると全部面白かったなと思います。印象に残りやすいっていうのもあるかも。
答えがないからこそ、自然と自分で考えようとさせてくれるので、社会派映画はとても好きです。
もっと社会問題関連の中国映画見たいのでご存知の方はご一報お願いします🙏🏻😂
最後に
最後に流れる「亲爱的」の元になった実在の人物たちの映像。映画では安徽の農村出身となっていましたが、実際は江蘇の農村の女性だったよう。このような農村でキリスト教が信仰されてることの方が衝撃的で、これを見た時「?!」となりました。(そっち)
※画像は一部お借りしております。